相続不動産の売却と所得税|損しないための基礎知識
- 株式会社ホームルームパートナー
- 2025年7月23日
- 読了時間: 16分

▶︎1. 相続不動産売却と所得税の基本

1.1 相続と譲渡所得税の関係
相続で引き継いだ不動産を売却すると、「譲渡所得税」という税金が発生します。 これは、不動産の売却価格から取得費や売却にかかった経費などを差し引いた「利益」に対して課税されるものです。 ここで重要なのが、「相続で受け継いだ場合でも、取得費が発生する」という点です。
相続した不動産を売るときは、相続税ではなく譲渡所得税が関係します。 つまり、「相続=相続税」ではなく、「売却=譲渡所得税」が関係してくるということです。
たとえば、親から相続した土地を数年後に売った場合、その売却益が大きければ所得税・住民税合わせて20%以上の課税が発生することもあります。 しかも、取得費が不明な場合には「5%ルール」が適用され、実際の利益よりも高く課税されてしまうリスクもあります。
よくある失敗例と注意点
以下のようなケースでトラブルになることが多いです。
取得費の確認をせず売却してしまった
→売却益が大きく見なされ、想定外の高額納税に
譲渡所得税の申告を忘れていた
→後日、税務署から指摘を受け、延滞税や加算税が発生
相続税を支払ったから譲渡所得税は不要と思い込んでいた
→別物の税金であるため二重課税になったと誤解し、トラブルに
解決策
・不動産の取得時期や金額の記録を調べる(登記簿や固定資産税評価証明書など)
・売却前に税理士などの専門家へ相談する
・「取得費加算特例」などの制度も早めに確認しておく
日常で忙しいと、こうした細かい税の手続きはつい後回しにしがちです。 でも、ほんの数時間の確認作業で数十万円の節税になることもあります。
1.2 所得税と住民税の計算方法
不動産を売却したときにかかる税金には、「所得税」と「住民税」があります。 この2つは「譲渡所得」に対して課税されるため、売却益が出る場合には必ず計算しておく必要があります。 具体的には、以下の手順で算出されます。
譲渡所得の基本計算式
売却益を求める基本的な式はこうです:
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
・取得費:不動産を購入したときの価格や仲介手数料など
・譲渡費用:売却時にかかる仲介手数料、測量費、解体費など
ここで算出された譲渡所得に対して、所得税と住民税が課税されます。
所得税と住民税の税率
税率は「不動産の保有期間」によって異なります。 相続で取得した場合、被相続人が取得してからの期間で判断されます。
保有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
5年以下(短期) | 30% | 9% | 39% |
5年超(長期) | 15% | 5% | 20% |
相続不動産の多くは長期譲渡に該当するため、通常は20%課税が基本になります。
よくある間違いと対策
次のような誤解から納税トラブルになることも。
住民税の存在を忘れていた
→確定申告で所得税のみ申告し、後から自治体から請求される
保有期間の数え方を間違えた
→相続時点からではなく、被相続人の取得時点からカウント
譲渡費用の経費計上漏れ
→仲介手数料や測量費を含めず、課税所得が多くなる
対策ポイント
・「取得日」は被相続人の購入日を確認
・譲渡費用はすべて領収書を残しておく
・住民税は翌年度に納付通知が届くことを覚えておく
計算のちょっとしたミスが数十万円の税負担増になることもあるので、丁寧な確認が大切です。
1.3 短期・長期譲渡所得の違いと税率
不動産の売却によって発生する「譲渡所得」には、短期譲渡所得と長期譲渡所得の2種類があります。 この分類によって、課税される税率が大きく異なるため、正確な判断がとても重要です。
短期と長期の区分ルール
区分の基準は、「譲渡した年の1月1日時点での保有期間」です。 具体的には以下のようになります。
短期譲渡所得:所有期間が5年以下
長期譲渡所得:所有期間が5年を超える
相続で取得した不動産の場合、この「所有期間」は相続した人ではなく、被相続人(元の所有者)が取得した日からカウントされます。
税率の違い
区分 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
このように、同じ金額の売却益でも、短期か長期かで納税額が2倍近く違うことになります。
よくある落とし穴と対策
保有期間のカウントを相続日から始めてしまった
→本来は被相続人の購入日から計算すべき
短期譲渡の税率を見落としていた
→高額な税金に驚き、資金繰りに困るケースも
5年経過直前に売ってしまった
→あと数ヶ月待てば長期になったのに損をすることに
対策のポイント
・登記簿や契約書で、被相続人の取得日を確認
・売却タイミングは「1月1日」を基準に慎重に判断
・可能であれば5年を過ぎてから売却することで節税に
たった数ヶ月の差で納税額が大きく変わるため、売却時期の見極めはとても大事です。
▶︎2. 所得税を安くするための取得費と取得費不明時の対応

2.1 取得費の計算ルール
譲渡所得税の計算において、「取得費」は非常に重要な要素です。 取得費を正しく把握できれば、課税対象となる所得を大きく減らすことができます。
取得費とは?
取得費とは、不動産を手に入れたときにかかった費用のことです。 具体的には以下のようなものが該当します。
土地・建物の購入代金
仲介手数料
登記費用
不動産取得税
測量費や造成費
建物の建築費用(注文住宅の場合)
相続の場合、自分が支払っていないため見落とされがちですが、被相続人が支払った取得費を引き継ぐことになります。
よくあるミスと注意点
購入時の書類を紛失して取得費が分からない
→書類がなければ実費を証明できず、「5%ルール」が適用される
建物の減価償却を忘れてそのまま計上
→税務署から指摘され、修正申告を求められる
リフォーム費用を取得費に入れてしまった
→取得費に含められるのは「資本的支出」のみで、修繕費は不可
解決策
・被相続人の確定申告書や売買契約書、登記書類を探して取得費を確認
・不明な部分は税理士などに相談し、合理的に計算する
・減価償却や取得費加算特例の対象を把握して適用ミスを防ぐ
日常生活の中で、相続書類を整理するのは面倒に感じるかもしれません。 でも、取得費を正確に出すだけで、譲渡所得税が数十万円も変わることがあります。
2.2 「5%ルール」の注意点
相続した不動産の取得費が分からないときに適用されるのが、「概算取得費」と呼ばれる5%ルールです。 これは売却価格の5%を取得費として扱うという制度ですが、実はかなり不利になることがあります。
5%ルールとは?
不動産の購入金額や経費の記録がない場合、税務上は以下のように計算されます。
取得費 = 売却価格 × 5%
たとえば、2,000万円で売却した場合、取得費はたったの100万円になります。 取得費が少ない分、譲渡所得が大きくなり、課税額が増える結果になります。
こんなケースで損をすることに
実際の購入費用が高かったのに5%しか認められなかった
→本来の取得費が1,000万円でも、記録がなければ100万円扱いに
領収書を捨ててしまって証明できなかった
→書面がないと税務署に認められない
売却前に税理士に相談せず、5%ルールで申告してしまった
→後から再計算しても更正の請求期限が過ぎていた
対策のポイント
・売買契約書、領収書、確定申告書の控えなどを丁寧に探す
・被相続人の過去の書類を整理し、取得費の手がかりを見つける
・少しでも費用の証明ができるものがあれば、税理士に相談する
5%ルールは最後の手段です。できるだけ実際の取得費を証明することで、課税を最小限に抑えられます。
2.3 減価償却費の取り扱い
建物を含む不動産を売却する場合、譲渡所得を計算する際に忘れてはならないのが減価償却費です。 これは、建物の価値が年々下がっていくと考え、その分を取得費から差し引くという税務上のルールです。
減価償却とは?
建物は年月が経つと価値が減っていくものとされ、その価値の減少分を毎年「減価償却費」として計上します。 相続で取得した建物についても、被相続人が建物を取得してから売却するまでの間に発生した減価償却費を差し引いて計算する必要があります。
たとえば、木造住宅の法定耐用年数は22年。 築10年で相続し、その後さらに5年経って売却した場合、15年間分の減価償却を行う必要があります。
よくある間違いとリスク
減価償却を忘れて取得費を満額で計上
→税務署から否認されて、追徴課税や延滞税が発生することも
法定耐用年数を勘違いしていた
→建物の構造によって年数が異なるため、計算ミスになりやすい
被相続人の取得費しか見ていなかった
→相続後の所有期間も含めて減価償却をしないと課税額が増える
解決のポイント
・建物の構造(木造、RC造など)と築年数を正確に把握する
・減価償却率は国税庁の資料などで確認し、正確に計算
・不明な場合は専門家にシミュレーションを依頼するのが確実
減価償却のミスは「うっかり」では済まされず、税務調査で指摘されやすいポイントです。
▶︎3. 特例控除制度の活用方法

3.1 3000万円特別控除(自宅)
不動産売却時に適用できる控除の中でも、非常に大きな節税効果があるのが「3,000万円特別控除」です。 この制度を活用できれば、譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができるため、ほとんど税金がかからなくなるケースもあります。
3,000万円特別控除とは?
この制度は、マイホームを売却したときに使える特別な控除です。 譲渡所得の金額から最大3,000万円まで控除できるため、売却益が3,000万円以内であれば所得税・住民税がゼロになる可能性もあります。
ただし、以下の条件をすべて満たす必要があります。
被相続人が亡くなるまで住んでいた家であること
相続開始から一定期間内に売却されていること(3年以内が目安)
相続人が売却時点で他人に貸したり住ませたりしていないこと
よくある勘違いと失敗例
空き家になったら対象外だと思っていた
→一定の条件を満たせば、空き家でも適用可能なケースがある
他人に貸していたため、控除が受けられなかった
→賃貸利用はNG。一時的に貸していた場合も対象外になる
申告を忘れて適用されなかった
→確定申告での手続きが必須。自動で適用されるわけではない
活用のポイント
・売却前に、控除の対象になるかを必ず確認する
・相続から3年以内の売却を目指す(例外あり)
・住んでいた事実や空き家状態を証明できる書類を準備する
この特別控除は、節税効果が非常に大きいため、条件に該当するなら確実に活用すべき制度です。
3.2 空き家3000万円特例
相続した実家などが空き家になっている場合でも、条件を満たせば「空き家3000万円特別控除」を利用することができます。 これは、被相続人が一人で住んでいた家を相続し、一定の条件で売却した場合に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
この特例の対象になるケース
以下のような条件をすべて満たす必要があります。
被相続人が亡くなる直前まで一人で住んでいた家屋
昭和56年5月31日以前に建てられた旧耐震基準の建物
売却時に耐震リフォームをするか、更地にして売ること
相続後3年目の年末までに売却すること
売却価格が1億円以下であること
耐震性が不足している建物をそのまま売ると特例の対象外になるため、解体またはリフォームが重要なポイントになります。
よくあるトラブルと注意点
家を解体しないで売ってしまった
→耐震基準に適合しないと、特例は受けられない
兄弟で共有相続していた
→共有状態では適用不可。単独相続が条件
相続後3年を過ぎて売却した
→申告期限を逃すと一切適用されない
対策と準備のポイント
・売却の前に、建物の築年数と耐震基準をチェック
・早めに解体するか、耐震改修を検討する
・不動産会社や税理士に事前相談して適用可否を確認する
この特例は「空き家問題」の対策として導入された制度で、対象になるなら大きな節税効果が期待できます。
3.3 取得費加算特例とその条件
相続した不動産を売却する際、支払った相続税の一部を「取得費」に加算できる制度が取得費加算特例です。 これにより、譲渡所得を減らして所得税・住民税の負担を軽くすることができます。
取得費加算特例の仕組み
この制度では、相続税のうち一定の金額を不動産の取得費に加算できるため、結果として課税される譲渡所得が少なくなります。 具体的には、以下のような計算がされます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 相続税加算分)− 譲渡費用
加算できる相続税額は、以下の条件を満たした場合に限られます。
相続開始から3年10か月以内に売却すること
売却した財産が相続税の課税対象だったこと
売却した本人が相続税を支払っていること
よくある失敗と落とし穴
売却時期が期限を過ぎていた
→「3年10か月」を過ぎると特例は適用できない
複数人で相続し、自分が相続税を払っていなかった
→相続税を実際に負担した人のみが対象
そもそも相続税が非課税だった
→課税されていない場合、この特例は使えない
活用のポイント
・相続税の申告書を確認し、対象財産と納税額をチェック
・売却前に「加算できる金額」を税理士に計算してもらう
・申告時に必要な書類(相続税の申告書、納付書の写しなど)を準備する
取得費加算特例は一見分かりにくい制度ですが、使えると節税効果はとても大きいです。
正しい知識で期限を逃さず、しっかり活用しましょう。
▶︎4. その他の関連税費と申告手続き
4.1 登録免許税・印紙税・住民税などの一覧
相続不動産を売却する際にかかる税金は、譲渡所得税や相続税だけではありません。 その他の付随する税費用も意外と多く、合計で数十万円単位になることもあります。 ここでは見落としやすい各種税金について、一覧で整理しておきましょう。
売却時・手続き時にかかる主な税費用
税金の種類 | 内容 | 費用の目安 |
登録免許税 | 不動産の名義変更(相続登記)にかかる税金 | 固定資産税評価額の0.4% |
印紙税 | 売買契約書にかかる税金 | 契約金額により1~6万円程度 |
住民税(譲渡所得に対して) | 所得税とセットで課税される | 所得により変動(5%程度) |
固定資産税・都市計画税 | 毎年1月1日時点の所有者に課税 | 年間数万円~数十万円 |
不動産取得税(相続時には非課税) | 相続による取得は非課税だが、遺贈や贈与時は対象 | 非課税または評価額の3% |
登録免許税や印紙税は、相続登記や売買契約の場面で必ず関係してきます。 とくに登録免許税は固定資産税評価額に対して課税されるため、高額物件では数十万円になるケースもあります。
よくある失敗例と対策
印紙税を貼り忘れて無効トラブルに
→売買契約書には必ず印紙が必要。貼付漏れは法的リスクに
相続登記を放置して税金が上乗せ
→未登記のままだと売却もできず、余分な手数料が発生
固定資産税の清算を売主負担にしてしまった
→売却時には精算ルールを明確にしておかないと損をする
確実な準備のポイント
・契約前に不動産会社と税費用の内訳を確認する ・印紙税額を契約金額から逆算して正しく準備 ・固定資産税・都市計画税の年間通知書をチェックしておく
売却金額が高くても、税金の負担が多いと手元に残るお金が減ってしまいます。
細かい費用も含めて、事前にしっかり把握しておくことが大切です。
4.2 相続登記や申告期限の注意点
相続不動産の売却には、相続登記(名義変更)と各種申告の期限管理が欠かせません。 これを怠ると売却そのものができなくなったり、追徴課税を受けることもあります。
【重要なポイント】
相続登記:2024年から義務化。期限は「相続を知った日から3年以内」
確定申告:譲渡があった翌年の3月15日までに提出
取得費加算特例:相続開始から3年10か月以内の売却が条件
登記が未完了のままでは不動産は売れませんし、特例制度も期限を過ぎると使えなくなります。
期限管理は節税だけでなく、スムーズな売却のためにも重要です。
4.3 小規模宅地等の評価減特例
相続税の節税につながる制度として、「小規模宅地等の評価減特例」があります。 適用されると土地の評価額が最大80%も下がり、相続税を大幅に減らせます。
【主な適用条件】
被相続人が居住していた土地であること
相続人がその土地を相続後も継続して住んでいる
適用面積は最大330㎡まで
たとえば、6,000万円の土地が1,200万円として評価されることもあり、節税効果はかなり大きいです。 ただし、売却する場合にはこの特例は無効になります。
住み続ける前提なら有効ですが、売却を考えているなら適用に注意が必要です。
▶︎5. 売却前に確認したい相続不動産の評価と手続き
5.1 相続不動産の評価方法と税金への影響
不動産の評価額は、相続税や譲渡所得税の計算に大きく関わります。 評価方法を誤ると、納税額が不必要に高くなるリスクも。
【評価方法の種類】
路線価方式:市街地の土地に使われる。相続税評価の基本
固定資産税評価額:地方の土地などで使われることが多い
時価(実勢価格):譲渡所得税の計算で使用される売却価格
評価基準によって金額が大きく異なるため、どの税金にどの評価額を使うのかを理解しておくことが大切です。
正確な評価が、納税額と節税対策の成否を左右します。
5.2 名義変更(相続登記)の重要性
相続した不動産を売却するには、まず相続登記(名義変更)を済ませる必要があります。 この手続きをしていないと、法的にはその不動産を売ることができません。
【相続登記のポイント】
2024年4月から義務化(罰則あり)
期限は「相続を知った日から3年以内」
登記しないと売却・譲渡・担保設定などが一切不可
遺産分割が済んでいない場合でも、法定相続分での登記は可能です。 名義が前所有者のままでは、買主も手続きできずトラブルになります。
売却をスムーズに進めるためにも、相続登記は早めに済ませましょう。
5.3 不動産売却前に行うべき準備とは
相続した不動産を売却する前には、トラブルを防ぐための準備が欠かせません。 税金・法務・物理的な整理まで、しっかり段取りをしておきましょう。
【売却前の主な準備事項】
相続登記の完了(名義変更)
境界線の確認・測量
建物の状態チェックと修繕の検討
必要書類の整理(権利証・固定資産税納税通知書など)
譲渡所得税や控除制度の確認
これらを怠ると、買主とのトラブルや余計な税金が発生することもあります。 特に境界問題は後から解決が難しく、売却の妨げになりやすいです。
準備を万全にすることで、売却もスムーズに進み、納税面でも安心です。
▶︎6. まとめ
ここまで、相続した不動産を売却する際の税金や手続きについて解説してきました。 特に「所得税」や「取得費の考え方」は、節税に直結する重要なポイントです。
【確認すべき重要ポイント】
譲渡所得税と住民税の計算方法
取得費や減価償却費の把握
3000万円控除・取得費加算特例の活用条件
相続登記と売却準備の流れ
登録免許税や印紙税などの付随コスト
特例制度や申告期限を逃すと、余計な税金が発生する原因になります。
早めの準備と正確な知識が、スムーズな売却と安心の納税につながります。
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